すごく重くてつらい話もありましたが、南の島の描写がきれいで最後まで読むことができました。
登場人物がみんな優しくて、本当の家族みたい。
私自身も命の誕生や死、生きることや過去と向き合い何度も泣いてしまいました。
辛い過去を抱えているまりあは、とある南の島を訪れます。
失踪した夫である小野寺君を探すため、一縷の望みをかけて。
生きている実感がないまりあでしたが、初めて声をかけてくれた「つるかめ助産院」の院長・鶴田亀子との出会いが人生を変えることになります。
複雑な家庭環境で育ち家族の愛を知らずに育ったまりあは、新しい命を身ごもっていたことに気付き、最初は戸惑いの方が大きくて喜べません。
ただ、不思議な縁がきっかけで「つるかめ助産院」でお手伝いをしながら暮らし始め、ここでの暮らしや仕事を通して気持ちに変化が訪れます。
ずっと目を背けていた自分の過去と向き合えるようになり、周囲の人の過去を知り、自分だけが不幸だと思っていたことに気付いたり、時に痛みを交えながらも少しずつ自分を出せるようになるのです。
そして院長や助産院で一緒に働くパクチー嬢、たくさんの妊婦さんとの出会いやデイサービスでの仕事を通して、身ごもったことを喜べるようにもなります。
特に艶子さんという妊婦との出会いは衝撃的で、だからこそ彼女の卒業はまりあにとっても過去との本当の卒業だったのかもしれません。
このシーンは特に心に残っています。
小野寺君といても孤独だったまりあが妊娠・出産だけでなく、たくさんの人との出会いや経験を経て絆を結んでいく姿がとても素敵でした。
だからこそラストには「う~ん…」となってしまいましたが、ゆったりとした空気を感じることができ、人っていいなと思えます。
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